名港中央のきまぐれブログ

きらら系やら何やらについて、好きなようにだらだら書きます

またぞろ。キャラクターについて考察

 今回は、前回の記事で書こうと思っていたが結局書かなかったボツ案を書いていくことにする。落書き程度の文章なので、気楽に読んで頂きたい。
なお、『またぞろ。』本編とメロンブックス付録の設定集のネタバレと考察を含むため、持っていない方は今すぐ書店で買ってきて本編を読んだ上でご覧いただきたい。

  • 穂波殊

殊に関しては、前回書いたため新しく書くことがなく、簡単にまとめる。
彼女は元来前向きで屈託のない性格だったが、高校入学を機に保護者同然の存在だった麻里矢と離れたことにより、自立した生活を送れず、他人に迷惑ばかり掛けていることに劣等感を覚えるようになる。他人に責められることを恐れ、自己肯定感が低下する一方、自己防衛本能から「自分はできるはず」という自尊心が増大し、性格が歪みきってしまった彼女は不登校の引きこもりとなってしまう。再び学校へ通うようになってからも、まともに泣いたり笑ったりすらできない彼女だったが、留年界隈メンバーの無条件で肯定する優しさに触れていく。そんな中、偶然出会った麻里矢に留年生と予備校生という大きな差を見せつけられ、更に麻里矢との約束を守れなかった自身の不甲斐なさ、髪型を変えるという決断の否定までされてしまう。自尊心を打ち砕かれた彼女は、それまで殆ど見せたことのなかった泣き顔を留年界隈メンバーに晒し、自身の過去と向き合うことになる。その結果、留年界隈メンバーの前で元来の彼女を取り戻すことができ、引きつっていない、自然な笑顔を見せたのだった。

  • 広幡詩季

病弱だったが克服した留年生。「他人に迷惑をかけてしまう」というコンプレックスは殊と同じだが、自分を責める殊に対し、彼女は周囲に優しくすることで乗り越えている。それ故、原因こそ違えど同じコンプレックスを抱えている殊を放っておけないのだろう。
彼女は、楓のことを「かえちゃん」とあだ名で呼ぶなどコミュニケーション能力も低くなく、(設定では)ゲームも上手く、成績優秀、家庭環境も良好と、目立った欠点が無い。しかしほぼ唯一と言っても良い欠点があり、それは人の役に立てないことを極度に恐れる、という点である。これは前述の「周囲に優しくする」ことの裏返しであり、58ページや82ページ、117ページでは実際に殊の役に立てていないと感じてショックを受けたり、狼狽したりするシーンが見られる。しかしながら、人に依存するほどのものではないようで、117ページでは殊の決断を尊重し、素直に応援している。

  • 六角巴

好きな物にしか興味がないフリーダムな性格で、殊や楓をよくからかっている。一方で、楓に上着を貸したり殊を気遣ったりと優しい一面もあり、更に成績が良いことやプロの写真家として活動していることを鼻にかけないなど、意外と素朴な性格をしている。面倒見もよく、「留年界隈」の中ではツッコミ役やまとめ役に回ることが多い。そんな彼女には最大の謎がある。ずばり留年した理由である。一応は趣味兼仕事の写真撮影ばかりして学校に来なくなった…とされているが、はっきりとは言っていない上、これに対して葉室が「アイツはそんな不器用なヤツじゃないわよ」と実質否定していること、留年以降欠席の描写が無いことから違う理由があると思われる。ただし成績は良いため、直接の原因は出席日数の不足だろう。では何が留年の理由なのか。考えられるのは、「社会性の無さ」である。これは87ページで葉室が言及している他、82ページでは「留年界隈」の他のメンバーが居ない中「帰ろうかな」と考えていることから、他に交流のあるクラスメイトがいないことが窺える。一方で、85ページを見る限りでは、2年生の間ではプロ写真家として人気になっている。しかし興味のあるものしか眼中にない彼女にとって、興味のないクラスメイトとの交流は気疲れするものだったのではないだろうか。或いは、学校外での仕事として写真を撮影している彼女が、クラスメイトが「友人」ではなく「写真家」として接してくることに嫌気が差した可能性もある。実際、留年界隈メンバーには写真家であることを「言わない方が面白い」という不自然な理由で伏せていたし、彼女が2年生の教室へなかなか行きたがらないことにも説明がつく。更に、彼女が写真を撮影する場面は現状では全く描かれておらず、写真家であることを明かしてからの留年界隈メンバーとの関係にも変わりがない。
また、彼女のフリーダムな性格にも疑問が残る。彼女は「いただきます」や「お邪魔します」などの挨拶を律儀にしており、昼食を食べる際も使わない右手を常に机に置くなど行儀がよく、厳しく躾けられてきたと考えられる。また、一緒に暮らしているはずの母親はアパレルデザイナーという設定で、表紙カバー下の過去の巴を見ると女の子らしいひらひらした服を着ているが、現在の服装は基本モノトーンとある。更に、94ページの「今日も親いないし」というセリフから、親とあまり顔を合わせていないことが分かる。つまり巴は母親と不仲であり、休日にあてもなく出掛けたり、殊や楓をからかうといったフリーダムな行動や偏食は、親(特に母親)の躾に対する反抗ではないだろうか。付き合いの長い葉室は恐らくこの事情を知っており、故に巴のことを腹パン心配しているのである。このことから、彼女が時折見せる優しく謙虚な性格こそが、彼女の本来の性格なのだと考えられる。そう考えると、118ページで彼女が殊にかけた「無理はするなよ」という台詞の重みが変わってくる。この台詞は、抑圧され、無理をすることの辛さを知っていた彼女だからこそ言えたのではないだろうか。

  • 阿野楓

マイペースでいつもポジティブな留年予備軍。感受性豊かで喜怒哀楽が激しく、コミュニケーション能力も高い。さて、彼女にも大きな謎がある。何故巴のことを予め知っており、慕っているのかである。彼女は「留年界隈」唯一の電車通学で、巴の近所に住んでいる訳ではないだろう。そして、巴が趣味兼仕事で写真撮影をしていることを知らなかった上、彼女に全く覚えられていなかったため、あまり深い付き合いではないと思われる。しかしながら、初対面で「お久しぶりです」と挨拶していることから、少なくとも入学前から知っていたことになる。また、葉室と充希を知らなかったことから学校関連の繋がりではないと思われる。そして、慕っている理由については全く触れていないため不明。
家庭環境についても全く話しておらず、不明な点が多い。しかし年の離れた兄と不仲ということは分かっており、遅刻が多いことから、自営業を営んでいる両親が放任状態なのではないかと考えられる。また夏休みには、特に金銭面で困っている様子が無いにも関わらずアルバイトをしており、巴程ではないにしろ、家庭環境が複雑な可能性がある。